日本人が宗教に無関心だと思ったら大間違い?日本人独自の宗教観
2017.8.24
日本人は宗教に無関心。日本人は無宗教。そう耳にすることがあります。
毎日のお祈りや定期的に教会などで祈りを捧げたりもしない。だからと言って無関心というわけでもなさそうです。
唯一の神を信じる宗教とは全く違う、神道や仏教がミックスされた日本人の宗教観を考えてみましょう。
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記事の概要・目次
日本人は宗教に無関心?生活に根付いた宗教儀式も多い
日本は無宗教の国だ、と言われることがあります。はたして、それは事実でしょうか?
2012年アメリカの調査機関「ピュー・リサーチ・センター」の調査では、日本は世界4位の無宗教国家であるというのです。
ここでの無宗教の定義は「特定の宗教を信仰しない。または、信仰を持たない」としていて「神様なんか存在しない」という無神論者ではありません。
無宗教とされるのは世界で11億人。そのうちの7億人が中国人です。
中国では、無神論・唯物論が国家の方針ですが、それでも22%ほどの民間信仰者、18%程度の仏教徒がいます。
日本では、無宗教が57%、仏教徒が36%という数字になりました。
たしかに「特定の宗教を信仰している」という日本人は一部ですが、潜在的に神道の考え方が根付いている場面も多くあります。
神社への初詣や、夏から秋のお祭りの多くが海や山、豊穣に祈り感謝を捧げることが起源です。
日本人は自覚していないだけで、多くの宗教儀式に触れているというのも事実です。
日本人は宗教には無関心でも宗教イベントは大好き?
日本人が宗教に触れる場面を想像してみましょう。
・葬儀、法要は9割以上が仏式で墓地や墓石も仏式が基本
・新年の初詣、子供が生まれたときのお参りや七五三などでは神社
・結婚式は、教会やチャペルでドレスやタキシードを着用した様式が主流
・クリスマス、バレンタイン、ハロウィンなどキリスト教系イベントが定着
無宗教というよりは「なんでもあり」ですね。
日本に古くからあった神道は、身の回りのすべてに「八百万の神」が宿るというアニミズム的な信仰です。
あらゆるものが神であるなら、海外から伝わった神とその儀式もまた受け入れようという感覚かもしれません。
ちなみに、日本人の多くが葬儀で仏教を選ぶ理由の一つは江戸時代の制度にあります。
「寺請制度」は、特定の寺の檀家になることを義務付けたもので「宗門人別帳」という現在の戸籍を寺が管理する役割もありました。
このため、多くの日本人は寺と何らかの繋がりがある場合が多いのです。
実は宗教にも社会や政治にも無関心な日本人
無宗教を「宗教的儀式に参加しない」と定義する場合もありますが、そうすると多くの日本人の場合はどうでしょうか。
「サンタクロースのプレゼントについて語っても、クリスマスのミサには参加しない」
これは無宗教ということになります。
では、正月に神社を参拝することは宗教行事に参加しているので神道信者?
葬儀で僧侶に読経してもらうことも宗教行事に当たるので仏教信者?
結婚式をチャペルで上げる人はキリスト神社と言える?
つまり、日本人は宗教に対してとてもおおらかであるとともに、逆に言えばとんでもなく無節操。
見方を変えるとイベントは楽しみたいけど「宗教」に関して、日本人は非常に無関心であるともいえます。
それは宗教だけでなく、政治や他人や社会問題にも無関心。大切なのは自分と仕事と家庭だけ…そんな人が多いのではないでしょうか。
日本人の宗教感は多神教が根本にあるがゆえのおおらかさ
日本にもともとあった宗教といえば神道です。これは、この世の物すべてに神が宿る「八百万の神」という考えが元になったもの。
海に囲まれた島国で、さまざまな自然災害がありながらも自然と共存するために、こうした信仰が生まれたのでしょう。
世界の主な宗教は、その教えを広めるために大きな戦争が起こることは珍しくありません。逆に、歴史上の大きな争いは宗教を発端にしている場合も多いのです。
しかし、日本では宗教を掲げた争いはほとんどありません。
神道があったところに、中国から仏教が伝わったときも、仏さえ神の一つとして受け入れました。神仏習合と言われるものです。
15世紀にイエズス会が日本へ布教しようとしたときは、「一神教」の神は唯一の存在であるという考えが理解されずに苦労したという話があります。
日本と西欧の宗教には根本的な違いもある
自分で特定の宗教を信仰していると自覚している人は、日本人のうち20%から30%であるという数字もあります。
しかし、大学生など若い世代では、ほんの数%程度。
西欧でも教会離れが進んでいると言われますが、宗教に関心がないわけではありません。
しかし、日本では宗教に無関心な場合が多く、逆に宗教と聞くとネガティブなイメージを持っていることも珍しくありません。
日本人の多くは自分は無宗教であると思っていますが、占いやお守りに親しんだり、自然に対して拝む、祈る行為などは染みついているといっても過言ではないでしょう。
自然災害の多い日本では、自然に対して畏怖を抱く原始的な信仰心は深く刻まれています。
こうして日本人の宗教は、自然発生したものが起源であり、キリスト教のように創始者がいる宗教とは根本的な違いもあります。
「無宗教」「無信仰」に思いがちな日本人ですが、宗教に対する根本的な姿勢が西欧のものと同じに考えるべきではないのかもしれません。
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